既卒でも就職は焦らない!まずは自己分析と自己理解!

既卒成功ナビでは、仕事・キャリア・働き方についての専門家の方に寄稿してもらう「有識者コラム」を連載しています!今回はキャリアコンサルタントの隈本稔さんに、自己分析・自己理解の考え方について記事作成をしていただきました!

【隈本稔(くまもとみのる)さん ご経歴】
製造メーカーで製品開発の仕事に14年間従事した後、現在は就職・転職の支援や、対人関係の問題解決支援を主な活動としている
国家資格キャリアコンサルタント・CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)・性格応用心理士1級・ストレスケアマネージメントの資格を所有

運営サイト:職りんく

「既卒」という言葉に縛られずに就職を考えよう

既卒の方は、「新卒としての価値がなくなった」と思い悩み、とにかく就職できる仕事先を探し続ける毎日を送っていないでしょうか?

既卒採用が以前より軟化しているとはいえ「行きたい企業は新卒募集ばかりで応募できる求人がない」と悩んでいる人もいるでしょう。

しかし、新卒・既卒といった肩書きは採用側にとって大きな問題ではありません。採用の可否の判断はただ一つ、受験者が「会社に利益を与えてくれる人材か否か」につきます。

これはあくまで「採用側」の判断です。では、あなたにとって「就職」とは何を求めるものでしょうか

仕事をするうえで求めるものの例
  1. 安定した給料を得られる
  2. 自分のやりたい事ができる
  3. 自分の働きたい場所(地元)で働ける

などなど、求めるものは人それぞれで違うでしょう。

理想的な就職は「求職者が求めるもの」と「採用側が求めるもの」が一致することです。これは、新卒や既卒の就職はもちろん、転職であっても同じです。

しかし、就職活動の状況に流されるがままに、気づけば「採用側が求める人間」を演じてしまう人がいるのも事実です。

既卒で焦るのもわかります。ただ、「自分が就職に求めるもの」を持ち続けることをまずは忘れないでください。

新卒就職者のその後はどうなっているのか

新卒での就職者たちが、就職後に順風満帆に仕事をしているかというと、必ずしもそうではありません。

厚生労働省『新規学卒者の離職状況

「新規学卒者の離職状況(厚生労働省)」のデータを見てみましょう。

新卒で就職したとしても、1年以内には10%、3年以内には実に30%近くの人が退職しているという事実があります。

しかも、この傾向は30年近く変わらずに続いています。就職率が低かった「就職氷河期」であっても、ほぼ同様の離職率だったのです。

新卒者が希望を持って就職したのにも関わらず退職した理由には、代表的なものとして以下があります。

新卒の社員が退職する理由
  1. 人間関係の問題
  2. 仕事が合わなかった

「人間関係の問題」は、どの会社でも起こり得る可能性があります。ただ、「仕事が合わなかった」という理由には、やはり就職先を決めた新卒者側にも原因があるのです。

自分が理想としていた会社に就職しても、実際に業務を始めると、理想と現実のギャップに苦しむ人が少なからずいます。これを「リアリティショック」と言います。

この「リアリティショック」を少しでも減らすためには、理解すべきものが2つあります。それが、「自己理解」と「仕事理解」です。

就職には「自己理解」と「仕事理解」が必要

「リアリティショック」のリスクを減らすには、「自己理解」と「仕事理解」の差が小さいことが重要です。それぞれについて紹介します。

疎かにされがちな「自己理解」

「自己理解」は、就職活動において最初に行うべき重要なものです。ただ、多くの人は「自己理解」を何となくで終わらせてしまいます。

「自己理解」には、大きく3つのことが重要になります。

【自己理解に重要なポイント3つ】
  1. 自己分析:性格・価値観・興味・能力など
  2. 環境分析:家族・学校/職場・経済・地域・人間関係など
  3. リソース点検:資産・資金・人脈・健康・経験など

自分の理解には、自分自信の分析も重要です。ただ、同時に自分に影響を与える環境を理解する必要があります。

なかなか就職が決まらずに悩んでいる学生さんが、実は教師をしている厳格な親の影響が強く「名のある安定的な企業じゃなければダメだ!」といった悩みを抱えていたという事例があります。

難関企業を受け続けて不採用が続き、就職を諦めて既卒となったのです。

ただ、もし就職していたとしても「本当に自分がやりたかったことなのか?」と、後から思い悩んでいたかもしれません。

この学生さんの場合、親と就職について話しをすることが、実は一番最初にすべきことかもしれないのです。

既卒者の中には、内定が得られなかった人もいれば、内定はもらえたが納得いく企業ではなかったという人もいるでしょう。

就職活動の内容を省みる前に、自分を整理する時間ができたと思って「自己理解」に時間を割いてみましょう。

「自己理解」の具体的な流れについては、後ほど紹介します。

多くの人がいきなり取り掛かってしまう「仕事理解」

「仕事理解」は、仕事に対する理解を深めることです。業種や職種などの情報を集めたり、希望する企業の情報を調べて、OB・OG訪問やインターンシップ・職場見学に参加することも該当します。

ほとんどの人は、「自己理解」はそこそこに、いきなり「仕事理解」を始めてしまいます。

そして、受験する企業を決めてから、その企業に合いそうな「自分の経験」を選択して、履歴書やエントリーシートに書き連ねていくのです。

その履歴書やエントリーシートは、実に見栄えがいいかもしれません。しかし、いざ採用面接となると、書面と違うその人が見えてきて採用が見送られることもあり得ます。

「自己理解」によってキャリアの方向性をある程度決めておかないと、「職業理解」の方向性が見当違いになり、多くの時間を失うことになり兼ねないのです。

「自己理解」の具体的プロセス

「自己理解」は「仕事理解」へ繋がる、就職活動において最も重要な活動です。ここでは、「自己理解」の進め方について紹介します。

経験の振り返りによる自己分析

自己理解において、最も重要なのは「今までの経験を振り返る」ということです。あなたの経験の中には、あなた自身の本質・性格、価値観で選択した決断以外にも様々な環境の影響があります。

それらを振り返ることで、あなたの生き方や信念がおぼろげながらも見えてきて、自分が将来どうありたいかを考えることができます。

採用試験においても、あなたの経験は語れますが空想は語れません。「経験」から自分がどういった人間かを理解することを意識してください

ライフラインチャートの活用

経験からの自己分析には様々なツールがありますが、時系列で自らの経験を振り返ることができるツールが「ライフラインチャート」です。

「ライフラインチャート」では、過去の自分のイベントを振り返りながら、その期間の「満足度」の推移をラインで記載します。

また、ラインを引くだけでなく、以下のような項目を記載しながら振り返ることをお勧めします。

【ポイント】
  1. 主な出来事・転機
  2. 影響を受けた出来事・人・本
  3. 成功体験
  4. 失敗体験

ラインチャートの中で、山と谷のポイントと高低差が急峻に変化しているポイントは、あなたに大きな影響を与えている可能性があります。

その出来事が起こった地点では、自分の価値観やそのような行動を取った理由を深く考えていきましょう。

別の紙に、「5W1H」を意識しながら当時の状況を詳細に書き出します。そして、今の自分との共通点や違いに着目しながら「今の自分」が形成されている理由を考えましょう。

アセスメントツールの活用

「アセスメントツール」は、自分の興味関心や性格傾向、職業能力・適性などを計測できるという特徴があります。

このツールのみで全てを判断することはできません。経験の振り返りで得られた自己分析結果を、補足してくれるものであると認識しておきましょう。

代表的なアセスメントツールとしては以下のようなものがあります。

【代表的なアセスメントツール】
  1. 職業への興味関心検査:キャリアインサイト、VPI職業職業興味検査
  2. 職業適性:GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)
  3. 性格・パーソナリティ検査:東大式エゴグラム新版TEGⅡ、MBTIなど

性格・パーソナリティ検査を除くアセスメントは、ハローワークで無料で受けることも可能です。地域によって取り扱っているアセスメントツールに違いがあるため、事前に確認を行いましょう。

文章化して「見える化」する

自己理解で最後に行うべきことは、具体的な文章として書き出すことです。自分の特性や経験・スキルなどを「見える化」する必要があります。

そのために役立つツールが、厚生労働省から利用が推奨されている「ジョブカード」です。ジョブカードは、以下の3つの書類から成り立っています。

【ジョブカードの要素】
  1. キャリア・プランシート
  2. 職務経歴シート
  3. 職業能力証明

作成に際して、キャリアカウンセリングを受けることが可能です。自分についての理解を深めるためにも利用を検討しましょう。

ジョブカードの作成支援は、ヤングハローワークや地域若者サポートステーションなどで受けることができます。

ジョブカードは履歴書などの応募書類への活用もできますので、一度作成してみることをお勧めします。

【引用】ジョブカード総合サイト

【注】職業訓練等でジョブカードが必要な場合、カウンセリングは必ず受けなければなりません。

既卒での就職活動では第三者の手助けの確保をしよう

就職活動では、独りでの活動は思考が偏りがちです。とくに既卒者は、新卒での就職活動に比べて悩みを相談する人が少なくなりがちです。些細なことでも相談できるような環境をつくりましょう。

親・兄弟や友人と話すことも重要ですが、キャリア構築に関係する専門家の支援も有効です。ジョブカードの作成でも述べたように、キャリアコンサルタントへのカウンセリング相談も、身近で受けられる支援の一つです。

また、厚生労働省では「おしごとアドバイザー」といったサービスも行なっています。こちらでは、就職に関して人には聞けないような悩みも電話やメールで相談可能です。

【引用】おしごとアドバイザー

自分の「軸」を持つことでキャリアプランは見直せる

新卒であっても既卒であっても、キャリアの方向は必ずしも1つではありません。実際に仕事を始めてみて、新しい人との出会いやあなた自身の経験の蓄積によって、キャリアプランが変化することもあります。

就職した後でも、「自己理解」で明確にしたあなたの”軸”は非常に重要です。現在の自分は過去の経験が影響しているからです。定期的に自分自身の本質や価値観には目を向けておきましょう。

就職は社会人生活のスタートラインです。就職直後にいきなり迷走して深い穴に落ちないように、「自己理解」にまずは時間を掛けてみて下さい